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PJの長い一日〜『ホビット』撮影最終日のレポートから(後編)

2013年07月30日 23:50

■7月26日 2:00pm -------------------------------------------

大リチャード、中リチャード、そして小リチャード。

午後2時。Fステージで最初のショットが完了して、ちょうど昼休みとなった。気が重くなる数字だ。セットアップ(*カメラや照明の位置交換)はおそらくあと7回か8回あるだろう。サブユニットはKステージへ移動して、昼食後に撮影開始だ。

彼らが昼食に出発した直前に、ぼくはそれぞれ異なるトーリンにポーズをとってくれるように頼んだ。1人はリチャード・アーミティッジで、他の2人はそうじゃない。推理してみてくれ…真ん中の1人はちょっとサイコだね。

将来、皆同じ背丈で映画を作ることを心待ちにしているよ。

今もプレッシャーは続いている。猛烈な早さで進まなくちゃいけない!

■7月26日 4:30pm -------------------------------------------

クリスチャン・リヴァーズ。

現在アンディ・サーキスは“猿”であることに忙しい(*5)ので、アクション・ユニット監督の責務は、クリスチャンが肩代わりすることになった。

1986年にぼくの最初の映画『バッド・テイスト』を仕上げたあと、初めてのファンレターを貰ったんだ。13才の男子生徒で、ドラゴンと魔法使いの絵を送ってくれたんだよ。本当にそれがぼくの最初のファンレターだったから、すぐに返事を書いたものさ。

『ブレインデッド』を作る頃には、この男子生徒は2年歳をとっていて、ぼくのストーリーボード・アーティストとして仲間に加わった。彼はぼくがその後制作した実質全てのストーリーボードを担当し続けて、『キング・コング』ではアニメーション監督となってオスカーを獲得したんだ。彼は現在サブ・ユニットを監督していて、彼自身のプロジェクトを制作しているんだ。

言うまでもなく、これがクリスチャンだ。ファンレターの成果が上がることを証明しよう!次から次へひっきりなしに…と言いたいが、それはしないよ。

クリスチャンは今、ドワーリンとKステージのリアルセットで戦闘シーンの撮影を続けている。彼はぼくたち(メインユニット)と殆ど同じ数のショットを撮って、今日で終わるようにしてくれた。

ぼくたちは第3部のための、トーリンのエキサイティングでショッキングな決闘シーンの撮影について競っている。全ての撮影をトーリンの物語で完了とするんだ。最終カットに相応しいと思うね。
これは明らかに、映画自体の本当に最後の場面じゃない。その場面については、実はおよそ2年前に既に撮影済みなんだ。だけど、夜遅くの作業に活力を与える素晴らしくエモーショナルな材料じゃないか。それはぼくたちの気分を最後まで張り詰めさせておくだろう。

午後4時半、今日はまだこれからだ。

【注5】ゴラム役で、『ホビット』のセカンド・ユニットの監督でもあるアンディ・サーキスは現在、『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の続編である『Dawn of the Planet of the Apes』の撮影真最中で、『ホビット』の追加撮影には参加しませんでした。先日開催されたサンディエゴ・コミコンにて、『Dawn of the…』の初スチルがお目見えしていましたね。

■7月26日 7:30pm -------------------------------------------

さようなら、ドワーリン!
非常に素晴らしいグレアム・マクタビッシュは、彼の最後のショットを名誉をもって競ってくれた。

メインユニットとサブユニットは接戦だよ。どちらも残すところ4ショット。あと3時間位かかりそうだ。最初に終わってビールを全部飲むのはどちらのユニットかな?

午後7時30分…ボクシングは進行中だ…。
 

■7月26日 8:15pm -------------------------------------------

  セクシーな映画監督と、まだそれ程セクシーじゃないドワーフ2人。

エイダン(・ターナー)とディーン(・オゴーマン)は、今日最初の出番を獲得した。彼らはランチタイムからずっと根気よく待っていたんだ。サブユニットはあと3ショットだ。

午後8時15分、ラストまで3ショットのメインユニットと並んだよ。

■7月26日 9:00pm(*6) -------------------------------------------

テント。

あと2ショット…多分もう1時間はかかるだろう。
これはもはや家だね。テントはぼくがこの2年半で、他のどこよりも沢山の時間を過ごしてきた場所だから。
ぼくはここを、スクリプターのヴィクトリア(・サリヴァン)と編集のジャベス(・オルセン)、ぼくのアシスタントのセブ(セバスチャン・ミーク)、それにプロデューサーのキャロ(キャロリン・カニンガム)と共有しているんだ。

ヴィクトリアはぼくたちが撮ったもの全てを厳重に見張って、大量のノートをとっている。だから、撮影したどんなカットも、ぼくのコメントも、この先何年経っても簡単にアクセスすることが出来るんだ。更に、彼女は愚かな間違いをうっかり見落とすことがないんだよ。

撮影している期間中にも、ジャベスとぼくは前に撮ったシーンを編集しようと努めている。日中考えなくてはならないことがとても沢山あるとき、それはとても難しいと気付く。それでもぼくたちはそれを試みて、お気に入りのテイクを選んでおくから、編集室で有利なスタートを切ることが出来るんだ。

ぼくが手を差し出せばいつでも、カップ一杯のホットティーをそっと手渡す技能にセブは熟練した。見事に調整された第六感だ。セットで、会議で、山腹で、それに朝3時の寝室だって、いつもお茶が出てくるんだ。

キャロは、全てが時間通りに動くように努め、全ての事態に関して、ぼくが真っ先に頼りにする人間なんだ。とても大きな支えだよ。彼女とは『乙女の祈り』から一緒に働いている。キャロとヴィクトリアはオーストラリア人だ。それはともかく、彼らは殆ど完璧だね。

ぼくの大きな椅子には逸話がある。ぼくはいつも、木とキャンバス生地で出来た小さな“ディレクターズ・チェア”に座っていたんだ。
2000年12月、『ロード・オブ・ザ・リング』撮影中の、まさに最後の週になってハリー・ノールズが訪ねてきたんだ。小さな椅子におさまるには、彼はちょっとばかり規格外だったので、クルーの一人がハリーのために古道具屋で安っぽい古ぼけたアームチェアを買ってきたんだ。

彼が帰って、撮影も終わった後にその椅子を試してみたらとても快適だった。次の作品のとき、キャロはそれを修復して、ぼくにプレゼントしてくれたんだ。それ以来ずっとこの椅子を使っているんだよ。酷い服と絶え間なく出される緑茶の他に、これも幸運のお守りみたいなものだね。

優れたユニットチームのおかげで、テントはいつも設置されていて、毎朝ぼくを待っている。その内側はいつも同じように見えるけれど、ドアからの眺めは日々変わっていくんだ。ぼくは驚くべきセット…川岸、照りつける太陽、土砂降りの雨、山、暗いトンネル、そしてホビット村を眺めたよ。ヴィクトリアとぼくは撮影が開始されたときから、ドアからの眺めの写真を撮るべきだといつも言っていたんだ。それは2日として同じことはなかった…ちょっと混乱したね。次回は多分実行するよ。

今、本当に疲れてきているよ。

【注6】この投稿だけ時間の記載がないので、投稿時間からおよその時刻を割り出しています。


■7月26日 9:21pm -------------------------------------------

リチャードの、このクローズアップを撮ったところだ。
2014年12月に(映画のどのシーンで使われているか)探してくれ!

あともう2ショット。メインユニットはトーリン、サブユニットはフィーリとキーリだ。

午後9時21分。撮影終了にだいぶ近づいてきた
 

■7月26日 10:32pm -------------------------------------------

最終ショット。

大きなモニターがメインユニット、小さなスクリーンの右下がサブユニットだ。

同時に最終ショットを撮っている…接戦だ。

午後10時32分、現時点であと4〜5テイク…、

いや、ちょっと待って、終わったよ!ぼくがこれを書いている間に、更にテイクを撮り進めて、終了だ!リチャードは素晴らしかった。サブユニットも殆ど同時に終わったよ。

笑顔と喜びと…そして悲しみ。あぁくそっ!すごく悲しいじゃないか。

■7月27日 01:08am -------------------------------------------

午前1時8分

20時間労働…15年に及んだトールキン…撮影日数771日…。

…そして、疲れきって家に帰ってきた。ティーンエイジャーでいっぱい(*7)の家に!長い夜になりそうだ!

【注7】PJのお嬢さんケイティーさんのツイートによれば、この日は彼女の誕生日で、バースディパーティーが行われていたとのこと。
 

■7月27日 01:14am -------------------------------------------

  午前1時14分

ミスター・スマッジの元へ帰ってきた。

長い一日。素晴らしい一日。その一端を担えたことに感謝だ。
今は眠ろう!


---という訳で、ピーター・ジャクソン監督がまる一日に渡って、忙しい中疲労困憊しながらも報告してくれた、『ホビット』撮影最後の日をお届け致しました(更新遅れてすみません)

真冬のニュージーランドで、10週に及ぶ撮影に励んだジャクソン監督と『ホビット』クルー、そしてキャストたち、とりわけ撮影開始前からトレーニングを再会して、撮影最終日まで頑張ったドワーフ役のスターたちには、心から「お疲れさまでした」と伝えたいです。

主要部分のクランクアップの際と同様、おそらく充分に休む間もなく早々にポスト・プロダクション作業に突入したことと思いますが、撮影途中に3部作化を決断し、出演者たちのスケジュールを調整した上、スタジオを説得して追加撮影を実行したジャクソン監督の拘りの全てが、余すところなく撮れていることを願わずにはおられません。
そして、第2部、第3部の新しいスチルやフッテージが公開される日を楽しみに待ちたいと思います。
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コメント

  1. あんじぇ | URL | LUUrCMQg

    Re:PJの長い一日〜『ホビット』撮影最終日のレポートから(後編)

    ■周芳さま、ひな@ひげさま

    こちらこそ、いつも暖かいコメント、ありがとうございます!
    中学生レベルの英語力で毎回四苦八苦しております故、かえって皆さまを混乱させているのではないか、誤った情報をお伝えしているのではないかと反省することしきりです。
    せめて現場の雰囲気だけでも伝えることが出来たのなら嬉しいのですが…。

    撮影最終カットのトーリン等を見るにつけ、原作を読んで分かっていても結末が見たいような、見たくないような、複雑な気分にさせられますね。
    それでも、15年トールキン作品に関わり続けたPJら主要スタッフと、撮影開始前の準備期間からトレーニングを続け、それぞれ役作りに励んだキャストたちの晴れ舞台として、『ホビット』3部作の完成をこの目で見られる日を心待ちにしています。

  2. ひな@ひげ | URL | -

    Re:PJの長い一日〜『ホビット』撮影最終日のレポートから(後編)

    いつもありがとうございます!
    どれだけPJが、スタッフが、そして役者さんたちが、どれほどの愛情と情熱をもって指輪から面々と繋がる長い時間を過ごしてきたのか、振り返ると感謝と感動と感激しかありません。
    そして、こうやって、丁寧な言葉で翻訳して伝えて下さるアンジェさんのおかげで、私もその感動の一端をリアルタイムで味わわせて頂けることに、とても感謝しています。
    撮影は終わったけれど、まだまだ続くビルボとドワーフ達の旅、道行きの先を知っていまず、心待ちにしていたいと思います。
    ああ、でも見たいような見たくないような、複雑です!

  3. 周芳 | URL | KnHW2vQ.

    Re:PJの長い一日〜『ホビット』撮影最終日のレポートから(後編)

    拝見!

    日本語が当たり前のように頭に入ってきますが、これをAngelaさんが頑張って翻訳して下さってるからだと認識しつつ、読ませて頂きました!
    素晴らしい作業です。

    商業誌の記事の翻訳文は、いささか眉唾物に思える意訳が多くて、いつも嫌気がさすんですよ。
    でもAngelaさんが提供して下さるものには、ストレートでシンプルな、共感のようなものを感じます。

    いつもありがとうございます。

    (^o^)v

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